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[控訴人側] 人証の申出補充書(1)

22002年(ネ)第4815号謝罪及び損害賠償請求控訴事件
控 訴 人(一審原告) 程 秀 芝  外179名
被控訴人(一審被告) 日 本 国

人証の申出補充書(1)

2004年5月25日

東京高等裁判所第2民事部 御中

                            控訴人ら訴訟代理人

弁護士   土    屋    公     献

同    一    瀬   敬  一  郎

同    鬼    束    忠    則

同   西    村    正    治

同    千    田         賢

同    椎    野   秀    之

同    萱    野   一    樹

同    多    田   敏     明

同    池    田   利    子

同    丸    井   英    弘

同    荻    野         淳

同    山    本    健    一

 すでに2004年3月18日付人証の申出により10名の専門家証人を申請している。
 各専門家証人は、6月末日提出の予定で鑑定意見書の作成を進めている。
 以下では、控訴人らの立証計画について整理するが、最小限に絞った申請であるので10名全員の採用を強く要請する。

1 細菌戦被害関係の立証について

 原判決は、原告らの被害立証について、「大半の原告らについては,それ(引用者・陳述書及び本人尋問)以上に原告らの上記主張事実を確認することができるより客観的な証拠は提出されておらず,これらの事実の的確な認定のためにはなお証拠の追加提出が可能かどうかが検討される必要があると思われる」(原判決36頁)と判示している。
 そこで、控訴審において、疫病発生地区の特定と控訴人らの死亡親族又は控訴人本人の感染した地区が疫病発生地区に含まれていること、当該地区の細菌戦被害の残虐性を立証するため、下記の3名の専門家証人を申請する。

(1) 浙江省の被害立証関係 2名、
ア 衢州の疫病地区の特定及び控訴人らの感染地区並びに同地区の細菌
戦被害の残虐性
・証人楼献(杭州商学院科技哲学研究所副所長、社会学)請求番号9
   番

イ 寧波の疫病地区の特定及び控訴人らの感染地区並びに同地区の細菌
戦被害の残虐性
・証人裘為衆(寧波市工人文化宮記者)請求番号10番

(2) 湖南省の被害立証関係 1名
(典型的な被害地である常徳市街地及び石公橋鎮の疫病地区の特定及び控訴人らの感染地区並びに同地区の細菌戦被害の残虐性)
・証人陳致遠(湖南文理学院教授、歴史学)請求番号8番

2 第二次不法行為関係(行政不作為による事実調査・救済義務違反)の立  証について

 控訴審において、第二次不法行為(行政不作為による事実調査・救済義務違反)の主張を追加した。
 そこで、日本政府の作為義務及び作為義務違反を基礎づける事実を立証のため、下記の3名の専門家証人を申請する。

  (1) 戦後における、浙江省・湖南省の本件被害地での防疫活動継続の事   実など
   ・証人江田憲治(京都大学教授、中国近現代史)請求番号6番

(2) 被控訴人国が細菌戦の真相を知らせない、認めないことが半世紀に
渡る被害者の精神的苦痛を継続、拡大している事実
 ・証人聶莉莉(東京女子大学教授、文化人類学)請求番号7番

(3) 戦後、頻繁に国会で取り上げられ、政府が細菌戦の被害拡大を予見
していた事実
 ・証人兒嶋俊郎(長岡大学助教授、中国近現代史)請求番号5番

3 第一次不法行為の法律的主張に関する法律専門家による立証について、

(1) 国家無答責関係1名

 原判決は、日本民法に基づく損害賠償請求につき、「戦前においては,公権力の行使による私人の損害については,国の損害賠償責任を認める法律上の根拠がなく,そのことは公権力行使についての国家無答責の法理を採用するという基本的法政策に基づくものであったから,公権力行使が違法であっても被告はこれによる損害の賠償責任を負わないものと解するのが相当である。」(原判決24頁)と判示し、国家無答責の法理を適用し、損害賠償責任を否定する。
しかし、本件細菌戦に関しては、国家無答責の法理は適用されず、原判決が誤っていることを立証するため、下記の専門家証人を申請する。

・証人岡田正則(南山大学法学部教授、行政法)請求番号1番

(2) ハーグ条約関係1名
原判決は、ハーグ条約に基づく損害賠償請求につき、「ヘーグ陸戦条約3条の規定は,ヘーグ陸戦規則の遵守を実効化するため,同規則に違反した交戦国の損害賠償責任を定めたものであり,同規則違反によって損害を被った個人が加害国家に対して直接損害賠償請求権を行使することまでを認めたものではないと解するのが相当である。」(原判決6頁)と判示し、控訴人個人の損害賠償請求権を否定する。
しかし、原判決の解釈が誤っていることを立証するため、下記の専門家証人を申請する。
 証人申惠?(青山学院大学法学部助教授、国際法、国際人権法)
                         請求番号2番

(3) 日中共同声明等関係 2名、
 原判決は、立法不作為による損害賠償請求の認定の中で、日中共同声明等につき、「国際法の基本原則によれば,本件細菌戦に係る被告の国家責任は,我が国と中国との国家間でその処理が決定されるべきものである。しかるところ,周知のとおり,中華人民共和国政府は昭和47年(1972年)9月29日の日中共同声明(日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明)において,『中日両国国民の友好のために,日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言』し,昭和53年(1978年)8月12日に署名され同年10月23日に批准書が交換された日中平和友好条約(日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約)も,『(日中)共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきことを確認』している。したがって,国際法上はこれをもって被告の国家責任については決着したものといわざるを得ない。」(原判決39頁)と判示し、中国政府が個人の賠償請求権も放棄したと認定する。
しかし、日中共同声明では、個人の賠償請求権まで放棄したものではないことを立証するため、下記の専門家証人2名を申請する。

ア 主にサンフランシスコ平和条約・日華平和条約及び日中共同声明
 ・証人管健強(上海政法学院教授、国際法)請求番号3番

イ 主に日中国交正常化交渉、中国政府の個人賠償に関する見解
 ・証人殷燕軍(関東学院大学教授、国際政治学、日中関係史)
                            請求番号4番
以 上


第1 立証計画について

 すでに、2004年3月18日付人証の申出により、10名の専門家証人を申請した。各専門家証人は、6月末日提出の予定で、鑑定意見書の作成を進めている。
 控訴人らの立証計画について、整理すると次のとおりである。

1 細菌戦被害関係の立証について

 原判決は、原告らの被害立証について、「大半の原告らについては,それ(引用者・陳述書及び本人尋問)以上に原告らの上記主張事実を確認することができるより客観的な証拠は提出されておらず,これらの事実の的確な認定のためにはなお証拠の追加提出が可能かどうかが検討される必要があると思われる」(原判決36頁)と判示し、証拠の追加提出を求めている。
 そこで、上記原判決の追加立証の指摘を踏まえて、控訴審において疫病発生地区の特定と控訴人らの死亡親族又は控訴人本人の感染した地区が疫病発生地区に含まれていることを立証するため、下記の3名の専門家証人を申請する。

(1) 浙江省の被害立証関係 2名、
ア 衢州の疫病地区の特定と控訴人らの感染地区
証人楼献(杭州商学院科技哲学研究所副所長、社会学)請求番号8番

イ 寧波疫病地区の特定と控訴人らの感染地区
証人裘為衆(寧波市工人文化宮記者)請求番号9番

(2) 湖南省の被害立証関係 1名
(典型的な被害地である常徳市街地及び石公橋鎮の疫病地区の特定と控訴人らの感染地区)
 証人陳致遠(湖南文理学院教授、歴史学)請求番号10番

2 第二次不法行為(行政不作為による事実調査・救済義務違反)の法律的
主張に関する法律外専門家証人による立証について

 控訴審において、第二次不法行為(行政不作為による事実調査・救済義務違反)の主張を追加したので、その立証のため、下記の3名の専門家証人を申請する。

(1) 戦後、頻繁に国会で取り上げられ、政府が細菌戦の被害拡大を予見
していた事実
 証人兒嶋俊郎(長岡大学助教授、中国近現代史)請求番号5番

  (2) 戦後、中国でのペスト発生と防疫活動継続の事実
   証人江田憲治(京都大学教授、中国近現代史)請求番号6番

(3) 半世紀に渡る被害者の精神的苦痛の継続、拡大
 証人聶莉莉(東京女子大学教授、文化人類学)請求番号7番

3 第一次不法行為の法律的主張に関する法律専門家による立証について、

(1) 国家無答責関係1名
 原判決は、日本民法に基づく損害賠償請求につき、「戦前においては,公権力の行使による私人の損害については,国の損害賠償責任を認める法律上の根拠がなく,そのことは公権力行使についての国家無答責の法理を採用するという基本的法政策に基づくものであったから,公権力行使が違法であっても被告はこれによる損害の賠償責任を負わないものと解するのが相当である。」(原判決24頁)と判示し、国家無答責の法理を適用し、損害賠償責任を否定する。
しかし、本件細菌戦に関しては、国家無答責の法理は適用されず、原判決が誤っていることを立証するため、下記の専門家証人を申請する。

証人岡田正則(南山大学法学部教授、行政法)請求番号1番

(2) ハーグ条約関係1名
 原判決は、ハーグ条約に基づく損害賠償請求につき、「ヘーグ陸戦条約3条の規定は,ヘーグ陸戦規則の遵守を実効化するため,同規則に違反した交戦国の損害賠償責任を定めたものであり,同規則違反によって損害を被った個人が加害国家に対して直接損害賠償請求権を行使することまでを認めたものではないと解するのが相当である。」(原判決6頁)と判示し、控訴人個人の損害賠償請求権を否定する。
しかし、原判決の解釈が誤っていることを立証するため、下記の専門家証人を申請する。

 証人申惠?(青山学院大学法学部助教授、国際法、国際人権法)
                         請求番号2番

(3) 日中共同声明等関係 2名、
 原判決は、立法不作為による損害賠償請求の認定の中で、日中共同声明等につき、「国際法の基本原則によれば,本件細菌戦に係る被告の国家責任は,我が国と中国との国家間でその処理が決定されるべきものである。しかるところ,周知のとおり,中華人民共和国政府は昭和47年(1972年)9月29日の日中共同声明(日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明)において,「中日両国国民の友好のために,日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言」し,昭和53年(1978年)8月12日に署名され同年10月23日に批准書が交換された日中平和友好条約(日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約)も,『(日中)共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきことを確認』している。したがって,国際法上はこれをもって被告の国家責任については決着したものといわざるを得ない。」(原判決39頁)と判示し、中国政府が個人の賠償請求権も放棄したと認定する。
しかし、日中共同声明では、個人の賠償請求権まで放棄したものではない。そこで、原判決が誤っていることを立証するため、下記の専門家証人2名を申請する。

ア 主にサンフランシスコ平和条約、日華平和条約、日中共同声明
 証人管健強(上海政法学院教授、国際法)請求番号3番

イ 主に日中国交正常化交渉、中国政府の個人賠償に関する見解
 証人殷燕軍(関東学院大学教授、国際政治学、日中関係史)
                            請求番号4番
以 上