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[控訴人側] 人証の申出補充書(2)

2002年(ネ)第4815号謝罪及び損害賠償請求控訴事件
控 訴 人(一審原告) 程 秀 芝  外179名
被控訴人(一審被告) 日 本 国

人証の申出補充書(2)

2004年7月20日

東京高等裁判所第2民事部 御中

                            控訴人ら訴訟代理人

弁護士   土    屋    公     献

同    一    瀬   敬  一  郎

同    鬼    束    忠    則

同   西    村    正    治

同    千    田         賢

同    椎    野   秀    之

同    萱    野   一    樹

同    多    田   敏     明

同    池    田   利    子

同    丸    井   英    弘

同    荻    野         淳

同    山    本    健    一


 すでに2004年3月18日付人証の申出により10名の専門家証人を申請し、7月13日または7月15日に各証人の鑑定書(甲502ないし甲511)を提出した。また、5月25日付人証の申出(2)で7名の控訴人本人を申請し、7月15日に各控訴人本人の陳述書(甲512ないし甲518)を提出した。
 専門家証人10名は、下記の3グループに分かれるが、各専門家証人の立証の必要性について、下記のとおり補充する。

1 第一次不法行為の法律的主張に関する法律専門家による立証について

この点に関し、4名の専門家証人を申請している。すなわち、(1)国家無答責については、証人岡田正則(南山大学法学部教授、行政法。請求番号1番)、(2)ハーグ条約については、証人申惠?(青山学院大学法学部助教授、国際法、国際人権法。請求番号2番)、(3)日中共同声明等については、証人管建強(上海政法学院教授、国際法。請求番号3番)、証人殷燕軍(関東学院大学教授、国際政治学、日中関係史。請求番号4番)の2名である。そのうち、証人管建強は、主にサンフランシスコ平和条約・日華平和条約及び日中共同声明に関する立証であり、証人殷燕軍は、主に日中国交正常化交渉、中国政府の個人賠償に関する見解についての立証である。

2 第一次不法行為関係及び第二次不法行為関係(行政不作為による事実調
査・救済義務違反、隠蔽による権利行使妨害の不法行為、立法不作為)の立証について

 この点に関し、3名の専門家証人を申請している。すなわち、(1)本件被侵害法益(倍加する精神的苦痛)の重大性については、証人聶莉莉(東京女子大学教授、文化人類学。請求番号7番)、(2)住民の被害の拡大継続については、証人江田憲治(京都大学教授、中国近現代史。請求番号6番)、(3)行政による被害拡大の予見可能性については、証人兒嶋俊郎(長岡大学助教授、中国近現代史。請求番号5番)である。

(1) 証人聶莉莉は、
@被害者遺族の記憶にある細菌戦被害を摘出すること、
A細菌戦被害が被害者の人生や社会生活に与えた深刻かつ永続的な影響
を再現すること、
B記憶保存のあり方や記憶の継承を分析することなどにより、
第一次不法行為の被害の重大性、深刻性を立証すると共に、被控訴人国が細菌戦の真相を知らせない、認めないことが半世紀に渡る被害者の精神的苦痛を継続、拡大し、第二次不法行為(行政不作為による事実調査・救済義務違反、隠蔽による権利行使妨害の不法行為、立法不作為)を作出していることを立証する。

(2) 証人江田憲治は、浙江省・湖南省の本件細菌戦の被害地では、戦後に
おいても現在まで、ペスト流行の危険性が続き、地域全体が防疫活動を継続しているなど、住民の被害が拡大継続していることを立証する。
 すなわち、1940年までペストがなかった地域で、本件細菌戦の結果、ペスト感染ネズミが現在でも発見され、ネズミ間の流行が高まれば人間でも流行する危険性が継続的に存在するため、湖南省常徳市や浙江省の行政当局や住民は、現在まで防疫活動を続けることを強いられている。
 これらの事実は、第一次不法行為の被害の重大性、深刻性を立証すると共に、第二次不法行為(行政不作為による事実調査・救済義務違反、隠蔽による権利行使妨害の不法行為、立法不作為)を作出していることを立証する。

(3) 証人兒嶋俊郎は、国会での政府答弁、戦後資料の分析を通じて、戦後、
731部隊や細菌戦が頻繁に国会で取り上げられ、政府が細菌戦の被害拡大を予見していた事実が明らかになったことを立証する。
 すなわち、日本政府は、公職追放者に関連して、石井四郎、北野政次の731部隊長の動向を把握しており、また80年代の恩給支給に関連して731部隊員の所在を戦後継続して把握し名簿を更新していたことが明白であり、731部隊員から事情聴取を行えば、本件細菌戦の加害事実の情報を正確に伝えて、中国の防疫活動を軽減することは可能であった。また、1982年には鈴木善幸内閣総理大臣が、「隠蔽しようとする考え方は毛頭ない。どの程度の資料が集められるかやらせてみたい」旨答弁しており、この時以降、行政不作為による事実調査・救済義務違反が明白になったといえる。
これらの事実は、第一次不法行為に故意過失があることを立証すると共に、第二次不法行為(行政不作為による事実調査・救済義務違反、隠蔽による権利行使妨害の不法行為、立法不作為)に故意過失があることを立証する。

3 細菌戦被害及び因果関係の立証について

 この点に関し、3名の専門家証人を申請している。すなわち、(1)湖南省の被害立証関係については、証人陳致遠(湖南文理学院教授、歴史学。請求番号8番)、(2)浙江省衢州の被害立証関係については、証人楼献(杭州商学院科技哲学研究所副所長、社会学。請求番号9番)、(3)浙江省寧波の被害立証関係については、証人裘為衆(寧波市工人文化宮記者。請求番号10番)である。

(1) 証人陳致遠は、湖南省常徳市の典型的な被害地である常徳市街地及び
石公橋鎮の疫病地区の特定、控訴人らの感染地区、同地区の細菌戦被害の残虐性及び因果関係を立証する。
(2) 証人楼献は、浙江省衢州の疫病地区の特定、控訴人らの感染地区、同
地区の細菌戦被害の残虐性及び因果関係を立証する。
(3) 証人裘為衆は、浙江省寧波の疫病地区の特定、控訴人らの感染地区、
同地区の細菌戦被害の残虐性及び因果関係を立証する。
以 上