第二審関係 (現在審理中)
第一審判決
中国の新聞に掲載された
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関連事件・毒ガス判決

[関連事件・毒ガス判決] 2005年1月20日(木)中国新聞







在外被爆者放置は違法
国に初の賠償命令

三菱広島元微用工訴訟
広島高裁4800万円 連行は「除斥」適用


 第二次世界大戦中、朝鮮半島から強制連行され、広島市の三菱工業(三菱)で働かされて被爆した韓国人の元微用工四十人が、国と三菱などに、強制連行・労働や、被爆後の放置に対する損害賠償など計四億四千三百五十万円の支払いを求めた「三菱広島元微用工被爆者訴訟」の控訴審判決が十九日、広島高裁であった。西島幸夫裁判長は原告の請求を退けた一審判決を変更し、国に原告一人当たり百二十万円、四千八百万円の支払いを命じた。

 西島裁判長は、国が一九七四年に出した「四〇二号通達」に基づき、一昨年まで在外被爆者を被爆者援護法などの適用外としてきたことなど「不合理な差別で違法であり、在韓被爆者は被差別感や不満感を抱くことになった」として精神的損害を認め、国に慰謝料の支払いを命じた。国の在外被爆者への対応に賠償責任を初めて認めた、画期的な判決になった。さらに一審の広島地裁判決(九九年三月)が採用した、明治憲法下では国家の賠償責任はないとする「一般的正当性はない」を退けた。
 しかし、強制連行をめぐる国の不正行為なども「成立の余地がある」としながら、「遅くとも七二年には請求が可能だった」として、二十年が過ぎると損害賠償の請求権が消滅する、民法の「除斥期間」を適用し、認めなかった。
 三菱などに対しても「未払い賃金などを支払う義務があるが、具体的金額が判断できない」とし、さらに、他の請求も含めて、除斥期間や時効を適用して損害賠償責任を認めなかった。

広島高裁4800万円 連行は「除斥」適用

解説)広島高裁が十九日に言い渡した「三菱広島元微用工被爆者訴訟」の控訴審判決は、被爆者援護法などの適用を受けることを長年はばまれてきた在外被爆者の現実を正面からとらえ、国に援護行政を根本から見直すよう求めた画期的な判決である。
 判決は、在韓被爆者訴訟で大阪高裁が二〇〇二年十二月に示した「被爆者はどこにいても被爆者」との判断を継承。大阪高裁は旧厚生省の四〇二号通達の運用を恣意的ではないと判断し、国の賠償責任を退けたが、広島高裁はさらに踏み込んで、渡日申請ができな在外被爆者には手当を至急しない国の姿勢を「法の趣旨、目的に反する」と厳しく批判した。
 元微用工訴訟の原告団の中には、健康問題から渡日できず、被爆者健康手帳を取得できない原告がいる。被爆者の高齢化が進むなか、支援者たちは「在外被爆者の間で新たな差別を生んでいる」と指摘し、改善を求めている。
 戦後六十年の節目の年に、国の被爆者援護策に転換を迫る司法判断が被爆地・広島であった。国は、高裁の判断や被爆者の声を重く受け止める必要がある。
 一方で、強制連行などの賠償席旧では、最近、各地の裁判所が賠償責任を認める傾向が強まっていたが、今回は時効や除斥期間を適用。戦後補償訴訟で、時の壁が重い課題であることをあらためて示す結果になった。

判 決 骨 子
●国は各原告にそれぞれ120万円支払え
●国による原告の微用は違法の可能性があり、国家無答責を理由に責任は否定できない
●原告の損害賠償請求権は時効と日刊請求権協定で消滅している
●十分な調査をせず誤った法解釈で、在外被爆者を援護対象から外した通達は職務上の義務違反
●通達により差別、放置された原告は精神的損害を受けた
●微用は旧三菱にも違法の可能性があるが、時効が成立している