《シリーズ・『裁かれる細菌戦』 vol.3_116ページ》






第二節 一九四一年常徳での細菌戦実施以前に七三一部隊で行われていたペストに関する研究

一 ペストの疫学的研究

 一九四〇年六月中旬〜一一月下旬にかけて農安で発生したペスト(患者三五三名、死亡者二九六名)、および九月下旬〜一一月中旬にかけて新京で発生したペスト(患者二八名、死亡者二六名)の疫学、臨床、細菌学を網羅した詳細な研究成果の報告が松村教授によって発見された。陸軍医学校軍陣防疫学教室(主任増田大佐)の高橋正彦による研究報告で(昭和一八年四月一二日受付)、昭和一五年(一九四〇年)農安および新京に発生せる「ペスト」流行について、六編からなる研究の成果が記載、報告されている。これら六編は「秘」扱いとなっており、@-1ペスト流行の疫学的観察 - 農安、@-2ペスト流行の疫学的観察 - 新京、A流行の臨床的観察、附「ペスト血清殺菌反応について」B流行における菌検索成績 C流行において分離せるペスト菌について、D流行における防疫実施の概況、の各編に分かれている。
 書く報告には「担任指導 陸軍軍医少将石井四郎」とあり、本研究が一九四〇年当時七三一部隊長であった石井四郎の指導の下で行われたことが明白である。これら報告書はこれまで七三一部隊で行われてきた基礎的研究の野外での応用ともいうべきものである。

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