《シリーズ・『裁かれる細菌戦』 vol.3_113ページ》






第三章 日本軍と細菌戦

第一節 日本軍における細菌戦についての考え方

 戦後五〇年を越えたいま、日本軍が中国で実施した細菌戦の事実が次々と明らかになっている。日本軍は「細菌戦」をどのように考えていたのか。
 一九四二年三月六日、関東軍の牧軍医中佐が、「細菌戦について」という講演を行っている。その牧軍医の講演記録を読むと、当時、日本軍が行っていた細菌戦に関する研究の目的を理解することが容易になる。そこで以下に牧軍医の講演内容を抜粋して示す。
・細菌は、平時であっても戦時であってもいつでも使える。
・細菌は目に見えないので、人に気づかれずに思い切って使うことができる。
・弾丸だったら一回だけの効力で終わるが、一回の細菌の攻撃をした後はそれによって続いて伝染病が流行ってくる。一つ起こればそれに続いて影響が起こってくる。そういうことが一般兵器と非常に違う。
・長く伝染病が続くことによって、戦を起している交戦国がお互いに原動力である国民の日常生活を脅かして、いろいろ精神的にも脅威を与えることがいわゆる細菌戦の特長である。

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