録を日本語で出版した(『細菌戦用兵器ノ準備及ビ使用ノ廉デ起訴サレタ元日本軍軍人ノ事件ニ関スル公判書類』外国語図書出版所・モスクワ・一九五〇年)。
これに対し、キーナン東京裁判主席検事やシーボルト対日理事会アメリカ代表などは、これをソ連によるフレーム・アップと非難したこともあって、ハバロフスク裁判は、殆ど反響をよばず、注目もされなかった。
しかしながら、この公判記録で明かにされた事実の多くは、その後発見された確実な資料とよく一致するので、裁判の政治性を別にすれば、事実関係に関する信憑性は高いと考えられるようになっている。
一九八一年、常石敬一神奈川大学教授(当時は長崎大学所属)は、『消えた細菌戦部隊』(海鳴社)を刊行し、七三一部隊等関係者の学会での報告を読み込むことにより、それが人体実験に基づくものであることを実証した。その後、常石教授は、アメリカ側の資料に基づき、アメリカ軍による七三一部隊等関係者に対する詳細な尋問の実態を解明した(『標的・イシイ』大月書店・一九八四年)。
同じ一九八一年、アメリカのジャーナリスト、ジョン・パウエルは、情報公開法により入手したアメリカ政府の機密資料に基づいて、アメリカが七三一部隊等関係者の免責と引き換えに人体実験による成果を入手した経緯を解明した(John Powell,‘A Hidden Chapter in History,' Bulletin of Atomic Scientists, Vol.37, No.8, Oct, 1981)。
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