《シリーズ・『裁かれる細菌戦』 vol.3_16ページ》






 同じ頃、小説家、森村誠一はその著書『悪魔の飽食』(光文社・一九八一年)『続・悪魔の飽食』(同・一九八二年)で、七三一部隊等関係者からのヒアリングやアメリカ政府資料から、人体実験の事実を解明した。

 一九八五年、慶応大学の松村高夫教授らは、古書店で発見された加茂部隊「きい弾射撃ニ因ル皮膚傷害並一般臨床的症状観察」、陸軍軍医少佐池田苗夫・陸軍技師荒木三郎「破傷風毒素並ニ芽胞接種時ニ於ケル筋『クロナキシー』ニ就テ」という疑う余地のない一次資料に基づいて、七三一部隊による毒ガス・破傷風芽胞の人体実験の事実を解明した(松村「『七三一』部隊の実験報告書」『歴史学研究』五三八号・一九八五年二月、前掲『七三一部隊作成資料』)。

 その後、七三一部隊等による人体実験に関するアメリカの極秘調査であるフェル・レポート(‘Brief Summary of New Information about Japanese B.W. Activities, from Norbert H. Fell, PP.E Division, Camp Detrick, to Chief Chemical Corps,' June 20, 1947. 総論のみ公開。各論は非公開)、ヒル・レポート(‘Summery Report on B.W. Investigations, from Edwin V.Hill, M.D., Chief, Basic Sciences, Camp Detrick, to General Alden C. Waitt, Chief Chemical Corps,' December 12, 1947.)の詳細が紹介されるようになり、人体実験の詳細は別にして、概要は、かなり把握できるようになった(両者の抄訳は常石『消えた細菌戦部隊・増補版』一九八九年、ヒル・レポートの前半部分の訳は松村・金平茂紀「『ヒル・レポート』─七三一部隊の人体実験に関するアメリカ側調査報告」『三田学会誌』八四巻二号・一九九一年七月、フェル・レポート総論の全訳は松村編『論争七三一部  

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